「日本(Japan)の誇る文学作品の数々が知りたい!!」という方に向けて⋯。
今回は、奈良時代の古典作品~平成時代のラノベまで、名作といえる有名な日本文学をまとめてみました。
「古典文学を学びたい」・「読書を始めたい」方におすすめ。年代など基礎情報もあるので大学受験や公務員試験の勉強にも役立っちゃいますよ!
外国の方も、日本文学(Japanese literature)を学ぶ良いきっかけになればと思います!それでは奈良時代から順番に紹介していきます。
日本文学の名作まとめ
奈良時代から平安時代まで順に、日本文学の名作をまとめます。
奈良時代の日本文学
まずは奈良時代(710年~)の上代文学から、成立が早い順にいってみましょう!
古事記
古事記(こじき)。712年に成立。ジャンルは歴史書。作者は太安万侶です。(正確には稗田阿礼の言葉を書き残したとのこと)
神話と伝説を描いた、日本最古の書物と言われています。アマテラスとかスサノオなどが出てくるので、神・天皇が好きな方におすすめです。
日本書紀
日本書紀(にほんしょき)。720年に成立。ジャンルは歴史書。作者は舎人親王たちです。
こちらは日本最初の勅撰の歴史書。勅撰っていうのは「天皇の命令で作った」という意味で、当時の元正天皇の命で作られました。内容は古事記とそこそこ似てるらしい。
懐風藻
懐風藻(かいふうそう)。751年に成立。ジャンルは漢詩集。作者は不明。
日本に現存する最古の漢詩集です。約120首の漢詩が収められています。
万葉集
万葉集(まんようしゅう)。759年に成立。ジャンルは歌集。作者は大伴家持たち。
こちらは日本に現存する最古の和歌集です。全20巻で約4500首の和歌が収録。天皇から農民まで色々な人の和歌があり、防人歌も有名ですね。
平安時代の日本文学
平安時代(794年~)は文学作品がたくさんあって大変です。こちらも大体の成立が早い順でまとめます!
日本霊異記
日本霊異記(にほんりょういき)。822年ごろ成立。ジャンルは説話集(実際あったという話。いわゆるノンフィクション)。作者は景戒。
日本で最古の仏教説話集と言われています。正式名称は「日本現報善悪霊異記」。因果応報や転生がテーマの話が多いです。
古今和歌集
古今和歌集(こきんわかしゅう)。905年に成立。ジャンルは歌集。撰者は紀貫之、紀友則、凡河内躬恒、壬生忠岑です。
日本最初の勅撰の和歌集。勅撰とは天皇の命令で作成したということでしたね。醍醐天皇の勅命で作られました。20巻で約1100首が収録されています。
竹取物語
竹取物語(たけとりものがたり)。910年以前ごろに成立。ジャンルは伝奇物語(いわゆるファンタジー)。作者は不明。
仮名文字による日本で現存最古の物語。THEかぐや姫ですね。天の羽衣や不死の薬など有名なアイテムが出てきます。
物語の祖でありながら「なよ竹のかぐや姫」という美少女キャラが登場し、「ファンタジーに美少女ヒロインは欠かせない」というのが日本人にとって不変の共通認識であることが分かります。
土佐日記
土佐日記(とさにっき)。935年ごろ成立。ジャンルは日記。作者は和歌でも有名な紀貫之です。
おそらく日本で最初の日記文学といわれる。作者の紀貫之は男だが、自分を女性として日記を書いています。いわゆるネカマみたいなもの⋯。もしくは「Vtuberの祖」とも言えるかもしれない。ともあれ後の女流文学の発達に大きな影響を与えました。
伊勢物語
伊勢物語(いせものがたり)。成立時期は不明。ジャンルは歌物語(和歌を中心とした物語の短編集)。作者は不明。
主人公の「男」は在原業平と推測されている。「東下り」や「筒井筒」などの話が有名か。男女の恋愛や家族愛などを交えながら主人公の「みやび」な生き方をえがいています。他の作品にも多大な影響があった様子で、後世でも「ニセ物語」などのパロディ本が作られたとか。
大和物語
大和物語(やまとものがたり)。951年ごろ成立。ジャンルは歌物語。作者は不明。
多様な主人公から成るオムニバス形式で、伊勢物語とは対照的。「姨捨(をばすて)」の話などが有名か。
蜻蛉日記
蜻蛉日記(かげろうにっき)。974年以後の成立。ジャンルは日記。作者は藤原道綱の母(本名不明。忌み名の文化で、特に女性は夫以外に名を隠すため)。
21年にわたる、辛い結婚生活の回想記とのこと。浮気の苦悩の話とかで、読むのもなかなか辛そうです⋯。女流日記のさきがけとされます。
宇津保物語
宇津保物語(うつほものがたり)。984年以前の成立。ジャンルは物語。作者は不明だが源順という説もあり。
20巻もあり、現存する最古の長編物語とされる。最古の物語である「竹取物語」は1巻しかなかったですからね。続く「源氏物語」にも大きな影響を与えたとされます。
主人公は藤原仲忠という名です。俺TUEEE系の物語なので、主人公の仲忠は「秘琴の技」という必殺技を使えます。秘琴を使って天女を召喚したり、雷系や氷系の魔法が使えるらしい。ヒロインもあて宮という絶世の美少女が登場。古典版の「ハリーポッター」もしくは「なろう系ラノベ」という感じでしょうか。
落窪物語
落窪物語(おちくぼものがたり)。989年ごろの成立。ジャンルは物語。作者は不明。
全4巻で、継母(ままはは)にいじめられた落窪の姫が、最後には幸せになるという、まさしく「シンデレラ」とほとんど同じのストーリーです。タイトルの落窪は部屋の名前に由来。
枕草子
枕草子(まくらのそうし)。1001年ごろの成立。ジャンルは随筆。作者は清少納言。
日本三大随筆の一つ。宮中生活や自然に関して鋭い感性で批評を描いたもの。「をかし」の文学といわれる。
和泉式部日記
和泉式部日記(いずみしきぶにっき)。1007年ごろの成立。ジャンルは日記。作者は和泉式部です。
敦道親王との10か月の恋愛を三人称でつづった日記。贈答歌が多くてロマンチックです。
源氏物語
源氏物語(げんじものがたり)。1008年ごろの成立。ジャンルは物語。作者は紫式部です。
主人公をイケメン光源氏とする、ラブコメファンタジー。本居宣長いわく源氏物語の本質は「もののあはれ」であるとのことから、「あはれ」の文学といわれる。
全54帖。1巻→「桐壺」や2巻→「帚木」などそれぞれの巻にタイトルがつけられています。ちなみに23巻のタイトルは「初音(はつね)」です。初音ミクの名字は源氏物語の巻名でもあるんですね。
ヒロインは多数登場しますが、やはりメインヒロインは紫の上ですね(幼少の頃は若紫と呼ばれる)。漫画版の源氏物語でもかなり可愛く描かれています。しかし名作と言われつつ、現代であればロリコン(淫行)や浮気でただの犯罪オンパレードなのが何とも言えない。これぞ日本というべきか。
ちなみに同作者による「紫式部日記」は、ほぼ同時期の1010年ごろの成立とされます。
和漢朗詠集
和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)。1018年ごろの成立。ジャンルは歌謡集。作者は藤原公任(きんとう)。
朗詠に適した588首の漢詩と216首の和歌をまとめたもの。漢詩では白楽天や菅原道真、和歌では紀貫之や凡河内躬恒のものが多い。
栄花物語
栄花物語/栄華物語(えいがものがたり)。1028年以後に成立。ジャンルは歴史物語。作者は不明(同タイトルで山本周五郎の小説もあるので間違えないように)。
編年体の体裁をとり、200年間の歴史が述べられる。特に藤原道長の栄華を賛美することに重きが置かれている。批判性より物語性に富んだ内容。
更級日記
更級日記(さらしなにっき)。1059年以降の成立。ジャンルは日記。作者は菅原孝標の女(むすめ)。
夢見がちで過ごした13歳の少女時代から、51歳までの人生を描いた回想記。分かりやすい説明では「オタク系女子の日記」と呼ばれてますね。なんとなく印象としては「ちびまる子ちゃん」と似てる。
大鏡
大鏡(おおかがみ)。1120年ごろに成立。ジャンルは歴史物語。作者は不明。
タイトルに「鏡」が付く四作品(四鏡)のうちの始めの作品にして最高傑作と呼ばれる。「ヤツ(大鏡)は四天王の中でも最弱⋯ではなく最強!」というわけですね。ちなみに四鏡(大鏡・今鏡・水鏡・増鏡)の覚え方は「だいこんみずまし」がベスト。
紀伝体にて、176年の歴史を記した作品。単なる賛美にとどまらず、批判的内容も含まれている。なぜタイトルに「鏡」が付いているかというと、歴史をハッキリと映し出す内容だからと言われています。
今昔物語集
今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)。1120年ごろに成立。ジャンルは説話集。作者は不明。
本朝(日本)・震旦(中国)・天竺(インド)の三国にわたる多くの説話を収録。題名は正式なものではなく、それぞれの話が「今ハ昔~」で始まっていることからこう呼ばれている。和漢混交文(漢字仮名交じり文)で書かれた最初期の文学であることも特徴の一つ。
今鏡
今鏡(いまかがみ)。1170年ごろに成立。ジャンルは歴史物語。作者は藤原為経といわれる。
四鏡のうちの一つ。全10巻で、146年間を紀伝体で記しています。
とりかへばや物語
とりかへばや物語。1180年以前に成立。ジャンルは物語。作者は不明。
「ばや」は願望を表す終助詞なので、「とりかへばや」=「取り替えたい」という意味。なんと、男児と女児を取り替えるという内容である。つまり「若君」=「男装の女児」と、「姫君」=「女装の男児」として育てられるわけだ。よくある性転換フィクションの先駆けで、つまり古典版の「君の名は。」である。
かなり官能的な描写もあるのが特徴。本来男である「姫君」が宰相中将に身を許すシーンなどもあり、いわゆる「腐ってやがる、早すぎたんだ…」的なストーリーである。当時の人々にとってもやはり衝撃的で、一時期は批判もあったとか。しかし近年ではジェンダーの視点から再評価されており、性と社会を考えるに当たっての重要な物語とされています。
山家集
山家集(さんかしゅう)。1190年以前に成立。ジャンルは歌集。作者は西行法師です。
西行の詠歌1569首を集めた私歌集で、六家集のひとつに数えられています。
鎌倉時代の日本文学
お次は鎌倉時代(1192年~)の文学作品です。だいぶ疲れてきましたが頑張りましょう。
水鏡
水鏡(みずかがみ)。1195年ごろに成立。ジャンルは歴史物語。作者は中山忠親(ただちか)とする説が有力。
四鏡の一つ。1500年間の歴史を編年体で記している。四鏡(大鏡・今鏡・水鏡・増鏡)の中で成立時期では3番目に当たるが、取り扱っている内容の時期は最も古くからになる。大鏡の内容の欠落を補うために作られたとの話が有力。
無名草子
無名草子(むみょうぞうし)。1200~1201年ごろの成立。ジャンルは物語評論。作者は藤原俊成女(としなりのむすめ)とされる。
現存最古の文芸評論書とされる。物語や歌集などについて論じている。
新古今和歌集
新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)。1205年ごろの成立。ジャンルは歌集。撰者は藤原定家など6人。
第八番目の勅撰和歌集。後鳥羽上皇の命で作られました。古今集から新古今集までの勅撰和歌集を八代集(古今・ 後撰・拾遺・後拾遺・金葉・詞花・千載・新古今)といいます。
方丈記
方丈記(ほうじょうき)。1212年に成立。ジャンルは随筆。作者は鴨長明です。
日本三大随筆の一つであり、隠者文学の代表作。和漢混交文で書かれており、「無常観」を象徴としています。
作者の鴨長明はこのあと「無名抄」(歌論書)や「発心集」(仏教説話集)なども書いています。
平家物語
平家物語(へいけものがたり)。1216年以前に成立。ジャンルは軍記物語。作者は不明だが、信濃前司行長が作ったと徒然草には記述あり。
主要人物は平清盛・木曽義仲・源義経の3人。力強い和漢混交文で書かれ、軍記物語の最高傑作と呼ばれる。その他の軍記物語も交えた「保元物語・平治物語・平家物語・承久記」の4作品はまとめて「四部之合戦書」と称されています。
宇治拾遺物語
宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)。1242年以後に成立。ジャンルは説話集。作者は不明。
平安時代の「今昔物語集」と並び、日本を代表する説話集の一つ。「わらしべ長者」や「雀の恩返し」など有名な昔話も多く収録されています。
十六夜日記
十六夜日記(いざよいにっき)。1280年ごろ成立。ジャンルは日記。作者は阿仏尼(あぶつに)です。
紀行文日記であり、10月16日に旅立ったため十六夜と付けられました。所領を子の為相に相続させるために、京都から鎌倉へ下る紀行が描かれています。母親の強い信念が描かれた作品で、タイトルの「十六夜」もかっこいいですね。
徒然草
徒然草(つれづれぐさ)。1330年ごろ成立。ジャンルは随筆。作者は兼好法師(吉田兼好)です。
日本三大随筆の最後の一つ。序段と243段から成り、和漢混交文と和文が使い分けられています。
室町時代の日本文学
お次は室町時代(1336年~)の文学作品です。
太平記
太平記(たいへいき)。1371年以降に成立。ジャンルは軍記物語。作者は不明だが小島法師ら複数人という説も。
和漢混交文で南北朝の内乱の歴史を描いています。全40巻で、歴史文学の中でも最長とも言われています。同タイトルでの小説やテレビドラマも多く作られました。
増鏡
増鏡(ますかがみ)。1376年以前に成立。ジャンルは歴史物語。作者は不明だが二条良基という説があります。
四鏡の最後の一つ。150年間の歴史を編年体で記しています。
風姿花伝
風姿花伝(ふうしかでん)。1400年以降に成立。ジャンルは能楽書。作者は世阿弥です。
能の理論書であり、「The flowering spirit」などの題名で、外国でも高く評価されています。
江戸時代の日本文学
次は江戸時代(1603年~)の文学作品です。
伊曽保物語
伊曽保物語(いそほものがたり)。江戸時代初期に成立。ジャンルは仮名草子。訳者は不明です。
イソップ物語の翻訳本なので、日本文学とは少し違いますが一応掲載。文語体、漢字仮名まじりで書かれています。
好色一代男
好色一代男(こうしょくいちだいおとこ)。1682年に成立。ジャンルは浮世草子(当時の風俗描写を基調)。作者は井原西鶴です。
人間の性情を写実的に描いた作品。この作品をもって浮世草子の始まりとされました。作者の井原西鶴はこの4年後に「好色一代女」と「好色五人女」、6年後に「日本永代蔵」、10年後に「世間胸算用」などの浮世草子作品も刊行しています。
奥の細道
奥の細道(おくのほそみち)。1694年ごろ成立(1702年に刊行)。ジャンルは俳諧紀行。作者は松尾芭蕉です。
松尾芭蕉の旅の記録で、俳句が融合した文学作品。日本の紀行作品の代表作とされています。
曾根崎心中
曾根崎心中(そねざきしんじゅう)。1703年成立(初演)。ジャンルは浄瑠璃。作者は近松門左衛門です。
実際に合った心中事件を題材としたものです。また、浄瑠璃の中でもこれまでの時代物に対して世話物という新しいジャンルを確立したと言われています。
雨月物語
雨月物語(うげつものがたり)。1776年成立(刊行)。ジャンルは読本(よみほん。江戸時代の伝奇小説)。作者は上田秋成です。
中国や日本の古典、伝説に取材した怪異小説を九つ集めたものです。
東海道中膝栗毛
東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)。1802年成立。ジャンルは滑稽本(庶民生活を滑稽に描いたもの)。作者は十返舎一九です。
2人の町人の旅の様子を、滑稽と狂歌をまじえて語った道中記です。滑稽本の始まりとなりました。コメディの元祖とも言えそうですね。
南総里見八犬伝
南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)。1814年に成立。ジャンルは読本。作者は滝沢馬琴です。
勧善懲悪をテーマとした、里見家再興を描く大長編小説です。
明治時代の日本文学
次は明治時代(1868年~)の文学作品です。
学問のすゝめ
学問のすゝめ(がくもんのすすめ)。1872年に成立。ジャンルは論文書。作者は福沢諭吉です。
これまでの日本人の常識をくつがえす内容で、国民の10人に1人が買ったと言われています。「天は人の上に人を造らず」という言葉は非常に有名。
浮雲
浮雲(うきぐも)。1887年に成立。ジャンルは小説。作者は二葉亭四迷です。
言文一致の文体で書かれていることが特徴。言文一致とは話し言葉に近い口語体を用いて文章を書いていることです。近代小説の始まりとされる。
舞姫
舞姫(まいひめ)。1890年に成立。ジャンルは小説。作者は森鴎外です。
雅文体(平安時代の仮名文に擬した文体)で書かれています。主人公である太田豊太郎が、ドイツで出会う美少女エリスと恋愛する短編です。しかし最終的にエリスは発狂してしまう(パラノイアにかかる)という、なんともサイコ的な小説。国語の教科書にもそこそこの長さの全文が載ってますが、そこまで強い教育的要素があるのか気になる部分。
たけくらべ
たけくらべ。1895年に成立。ジャンルは小説。作者は樋口一葉です。
14歳の少女美登利 (みどり)の淡い恋が描かれています。最初はお互いに嫌いあうという仲で、徐々に良い感じになるという青春!という感じの小説。しかし最後は時代を感じるほろ苦さ⋯。
みだれ髪
みだれ髪(みだれがみ)。1901年に成立。ジャンルは歌集。作者は与謝野晶子です。
恋愛についてストレートに表現した歌が、当時の文化に対し賛否両論の渦を巻き起こしました。反戦の歌も作っているなど、画期的かつ勇気ある文学家でした。
我が輩は猫である
我が輩は猫である(わがはいはねこである)。1905年に成立。ジャンルは小説。作者は夏目漱石です。
猫を語り手とし、人間模様が風刺的に描かれています。翌年には同作者による「坊っちゃん」「草枕」などの作品も成立しました。
破戒
破戒(はかい)。1906年に成立。ジャンルは小説。作者は島崎藤村です。
主人公である瀬川丑松が、被差別部落に生まれたことを隠して生きていたが、最終的には素性を打ち明けアメリカへ旅立つというストーリー。当時の文化を色濃く反映しており、日本における自然主義文学の代表的作品。映画化やテレビドラマ化もされています。
蒲団
蒲団(ふとん)。1907年に成立。ジャンルは小説。作者は田山花袋(たやまかたい)です。
私小説の代表的な作品。自身が女弟子に片思いし、性欲に悶える様を描くという衝撃的な内容。その女弟子(ヒロイン)は実際にいる方(岡田美知代さん)をモデルにしていて、まさしく自分の身近な女性に対するエロさを曝け出した赤裸々な小説。勇気が半端ない。あまりに衝撃的過ぎて自然主義文学の定義を塗り替えたともいわれる。
作者名とタイトルを「かたい蒲団」と覚えた方は、おそらく90%以上でしょう。
大正時代の日本文学
次は大正時代(1912年~)の文学作品です。
こゝろ
こゝろ(こころ)。1914年に成立。ジャンルは小説。作者は夏目漱石です。
日本で一番売れている本らしい。今でも結構読みやすい。国語の教科書でも鉄板。私、K、静の三角関係を描いた恋愛が主軸。やはり創作物の中でもなんだかんだラブコメが最強なのだ。
ちなみにKの本名は不明である。そのせいで漫画版こころのKのお墓は、見たものに思わず「シュールだなあ」と呟かせる感慨深いものとなっている。
https://twitter.com/AKN_tnkl/status/375240610598223872
羅生門
羅生門(らしょうもん)。1915年に成立。ジャンルは小説。作者は芥川龍之介です。
こちらも国語の教科書の鉄板。生きるための人間のエゴを描き出す。内容が教育的に良いのかどうかは微妙だが、とりあえず「正義」と「悪」について考えるきっかけにはなる作品。翌年には同作者による「鼻」も成立。
高瀬舟
高瀬舟(たかせぶね)。1916年に成立。ジャンルは小説。作者は森鴎外です。
優しい気持ちになれる作品なので好きな人も多そう。自殺に失敗した弟を自らの手で殺めた男の話です。「安楽死の是非」を考えさせられる一冊。
暗夜行路
暗夜行路(あんやこうろ)。1921年に成立。ジャンルは小説。作者は志賀直哉です。
タイトルからしていかにも暗そうな話だが、実際はそこまでダークでもない。主人公が女性の胸を触って「豊年だ!豊年だ!」と叫ぶシーンが有名。思わず「文学的とは」を考えさせられます。
伊豆の踊子
伊豆の踊子(いずのおどりこ)。1926年に成立。ジャンルは小説。作者は川端康成です。
作者の実体験が基となっており、国内でも6回映画化されるなど愛されている作品。伊豆へ一人旅に出た20歳の青年が、初々しい乙女である14歳の踊子(薫)に会い、その無垢さに心が癒されるという内容だ。つまり「幼い美少女に萌えて、心が癒される」お話である。
踊子の可愛さが現れているシーンが、川向こうの温泉から裸で主人公に手を振るシーンである。その無垢さに主人公は悩みがいっぺんに吹き飛び、自然に喜びで笑いがこぼれるシーンがある。いわゆる「萌え」である。
川端康成は他の作品(「眠れる美女」など)でも処女へのこだわりが凄いことで有名である。また、三島由紀夫が「伊豆の踊子」の解説でヒロインの処女性に触れており、「処女を犯した男は、決して処女について知ることはできない。処女を犯さない男も、処女について十分に知ることはできない。しからば処女というものはそもそも存在しうるものであろうか。」という名文(迷文)を残している。いつの世も、天才と変態は紙一重なのかもしれない。
昭和時代の日本文学
次は昭和時代(1926年~)の文学作品です。有名な作品も多くあって書ききれないのとかなり疲れてきたので、特に有名なものなどを取り上げています。
銀河鉄道の夜
銀河鉄道の夜(ぎんがてつどうのよる)。1934年に成立。ジャンルは童話。作者は宮沢賢治さん。
少年ジョバンニと、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語。独特のセリフの掛け合いや、造語などが良い味を出している作品。「けれどもほんたうのさいはひは一体何だらう。」タイトルやキャラの名前からしても、本当に綺麗な作品だと感じます。
雪国
雪国(ゆきぐに)。1935年に成立。ジャンルは小説。作者は川端康成さん。
主人公が温泉街で出会う女性たちの苦労・恋愛などの様子が描かれる。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という書き出しが有名ですね。「いきなり本のタイトル出てきた⋯」と突っ込みたくなるのもご愛敬。
斜陽
斜陽(しゃよう)。1947年に成立。ジャンルは小説。作者は太宰治さん。
終戦後に没落していく人々の様子を描いた、太宰の代表作です。この翌年1948年には「人間失格」を書き、その一か月後に入水自殺したとされています。
ノルウェイの森
ノルウェイの森(のるうぇいのもり)。1987年に成立。ジャンルは小説。作者は村上春樹さん。
タイトルはビートルズの楽曲「Norwegian wood」から。基本的に恋愛が主軸だが、テーマとして「生と死」を挙げる人が多い。あとは自殺とセックスが多い話。「海辺のカフカ」でもそうだったが、村上春樹の作品は「え!?この人ともエッチなことするの!!??」というのが多い印象。
キッチン
キッチン(きっちん)。1988年に成立。ジャンルは小説。作者は吉本ばななさん。
一応は短編集であり、「キッチン」「満月 キッチン2」「ムーンライト・シャドウ」の三部になっている。
大学生の主人公桜井みかげの恋愛模様を描く。みずみずしい感性から「少女漫画風な小説」と評されることもあり、確かになあと思う。彼氏ではないが同居している男の子にカツ丼を届けたりする、なんというか女性風にエモい小説。どれも短いのと、文章もかなり読みやすいので男性にもおすすめ。
平成時代の日本文学
いよいよ平成時代(1989年~)の文学作品です。一気にエンターテイメント小説が流行した時代、若者向けの名作ライトノベルもしっかり紹介していきますよ!
半分の月がのぼる空
半分の月がのぼる空(はんぶんのつきがのぼるそら)。2003年に成立。ジャンルはライトノベル。作者は橋本紡さん。
全8巻。病院を舞台にした、ボーイミーツガールの恋愛小説である。魔法などの非日常なことは出てこないことから、ラノベの中では異色の作品。ただし漫画化・ドラマCD化・アニメ化・実写ドラマ化・実写映画化までされている超人気作品。
ヒロインの里香は「文学系の病弱ツンデレ」であり、山本ケイジさんの描くイラストも超かわいい。後に「完全版 半分の月がのぼる空」としてリメイクされたバージョンもあるのだが、挿絵が全て削除されているので「何が完全版やねん」状態である。私的には最初の作品を手に取ることをおすすめします。ラノベ以外の作品なら「流れ星が消えないうちに」がおすすめ。
あと、アニメはかなり話が短いことと絵が違うこともあり、やはり原作を読んで欲しい。実写映画はもはや別物。ちなみに三重県伊勢市が舞台で、聖地である虎尾山では盛んにファンの方も訪れています。赤福が無性に食べたくなります。
空の中
空の中(そらのなか)。2004年に成立。ジャンルは小説。作者は有川浩さん。
著者の自衛隊三部作(塩の街、空の中、海の底)の内の一つ。不思議な生物「フェイク」と、それにまつわる人々の様子が描かれる恋愛SFです。心がほっこりします。あと、文庫版にのみ追加されている短編の後日談「仁淀の神様」が泣ける。この作品が好きな方は「海の底」もぜひおすすめです。
ゼロの使い魔
ゼロの使い魔(ぜろのつかいま)。2004年に成立。ジャンルはライトノベル。作者はヤマグチノボルさん。
全22巻。平凡な高校生の主人公が、あるとき魔法の世界にいる落ちこぼれ魔法使いルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに召喚されてしまうことから物語は始まります。ファンタジー要素・恋愛要素ともに優れており、日本版のハリーポッターといった感じ。1巻の終わり方などはとても綺麗で痺れます。
ちなみにアニメでも声優を担当した釘宮理恵さんが朗読をしてくれる「オーディブル版」もあって、そちらもかなりおすすめです。詳しくは『ラノベをプロの声優が朗読!Amazonオーディブルの登録方法』をご覧ください。
恋空
恋空(こいぞら)。2005年に成立。ジャンルはケータイ小説(携帯電話で執筆、閲覧される小説)。作者は美嘉さん。
女子高生の主人公である田原美嘉が、恋愛、妊娠、流産などを経験。さらに過去に付き合っていた桜井弘樹(ヒロ)がガンで亡くなってしまうという悲恋のストーリー。主人公と同世代である女子高生など若い女性に爆発的人気となりました。
ケータイ小説だけに文章や内容の稚拙さには批判があるものの、門戸の高い純文学よりも若者に寄り添ったという点では評価できるのでは。ともあれいわゆる「ウェイ系」の感が強いので、系統の真逆な人が多いインターネット界では「スイーツ(笑)」と揶揄されることが多かった。そういった騒動の結果、「人それぞれ感性や文化が違うので、お互いを尊重するのが必要」と学ぶことができた人も多かったのではないでしょうか。
ソードアート・オンライン
ソードアート・オンライン。2009年に刊行(オンライン小説では2002年から連載)。ジャンルはライトノベル。作者は川原礫さん。
略称は「SAO」。VRMMORPG「ソードアート・オンライン」の中に閉じ込められた少年少女たちの物語。小説もアニメも、国内にとどまらず海外でも大人気。若者で知らない人はほぼいない程の人気作となりました。ゲーム化も多くされています。
Re:ゼロから始める異世界生活
Re:ゼロから始める異世界生活(リ:ゼロからはじめるいせかいせいかつ)。2014年に刊行(オンライン小説では2012年から連載)。ジャンルはライトノベル。作者は長月達平さん。
公式略称は「リゼロ」で、いわゆる異世界転移ものの代表作です。アニメ化もされてと大ブームとなりました。刊行前は「小説家になろう」という小説投稿サイトで連載されており、このサイトから出版された異世界系のライトノベルは「なろう系」と呼ばれています。
まとめ
今回は「奈良時代の古典作品から平成時代のラノベまで」の日本文学をまとめてみました。
令和時代も、様々な面白い文学作品が登場すると嬉しいですね。また、若者に読書する人が増えて、社会に良い影響があると良いなあと思います。
近現代のものは主に小説に絞らせていただきましたが、漫画やノベルゲームなど文学作品と呼べそうな名作もたくさんあります。そちらに関してはぜひ下の関連リンクからご覧になってみて下さいね。
それでは長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
※成立年代など当記事の情報が間違っている可能性もありますが、ご了承ください。